指輪の秘密
幸せであろうと
不幸であろうと
ムードの犠牲者になる代わりに
自分のムードの支配者になること
「これもまた過ぎ去る」
多くの賢者たちを擁していた王が自分の富に不満を感じていた。しかも、彼の国よりも力の強い国が攻撃の準備をしていた。
王は死を、敗北、絶望、寄る年波を恐れていたのだった。そこで彼は賢者たちを集めて言った。
「なぜだかはわからないが、私はある指輪を捜さなければならない……それは、不幸なときには私を楽しませてくれると同時に、もし幸せなときに見たら悲しくさせてくれるという指輪だ」
彼は、ふたつの扉を開くことのできる鍵を求めていた——幸福の扉と不幸の扉。
彼はなにを求めていたのだろう?
彼は自分のムードの習得を求めていた。
自分のムードの主人になりたかった。
もう、これ以上自分の気分にふりまわされたくなかったのだ。
賢者たちは相談しあったが、どのような結論も見い出せなかった。ついに彼らはスーフィー神秘家に助言を求めた。
スーフィーは自分の指から指輪を外し、それを彼らに与えて言った。
「ひとつ条件がある。それを王に与えるがいい。
だが、彼に伝えることだ。すべてが失われ、混乱の極みに達して、苦悩の極みに達し、まったく望みがないときにしかその石の裏側を見てはならない。さもなければ彼はメッセージを逃すだろう」
だが、彼に伝えることだ。すべてが失われ、混乱の極みに達して、苦悩の極みに達し、まったく望みがないときにしかその石の裏側を見てはならない。さもなければ彼はメッセージを逃すだろう」
王は従った。国は失われ、自分の命を救うただそれだけのために、彼は王国から逃げ出した。
敵が迫っていたが、馬は死んでしまい、彼は自分の足で走るしかなかった。彼は窮地に陥り、底知れない深淵だけが残った。
最後の瞬間になって、彼は指輪を思い出した。
彼はそれを開け、石の裏側を見た。
「これもまた過ぎ去る」
“Everything passes away”